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柴咲コウ 『Love Paranoia』
<初出「Groovin'」2009.11-12/ISSUE#122>


独特の存在感は意図しないからこそ光る。
多彩な曲調の中で、自己を深く誠実に掘り下げた意欲作。


柴咲コウ-A


 女優、そして作詞も手掛けるシンガーである柴咲コウ。
 前者は演技だからともかく、時折出演する歌番組、もしくはインタヴューなどで知る彼女は何者にも媚びず、奔放だ。自己主張はある。
 だがステレオ・タイプな物言いを好まない。
 彼女の〈その場しのぎ感〉のなさ、それが私の目にはたいそう魅力的に映る。
 彼女の書く詞も同様だ。
 ラヴ・ソングひとつとっても「一緒にいること」と「会えない切なさ」と「出会いに感謝」のようなテーマをありきたりな語彙で連呼する最近主流のJ-ポップ詞とは一線を画すもので、わがままも誠実も、ときめきも不安も、ときに過剰なほどに自分の心を掘り下げて書いているのがわかる。
 女優として次々と話題作に出演。
 先にリリースされたベスト・アルバムも高いセールスを上げたと聞く。
 説明するまでもなく彼女は女優としてもシンガーとしても人気者となった。
 だが、我々が感じるその一癖も二癖もある柴咲コウ像は、この最新作でもまったくブレてはいない。

 2年7ヶ月ぶり、4枚目のオリジナル作。
 嘘も真実も見透かすような力強い瞳が目を惹くジャケットも印象的だが、タイトルも圧巻。
 Love Paranoia="愛の偏執症"と呼ぶべきか。
 それが「KOH+/最愛」以外のすべての作詞を手掛けた彼女自身を指すのか、女優魂が成せる最高の演技なのかは別として、この表題には強い意思と同時に、綺麗事で上塗りされた"平穏"に対するアンチテーゼすら感じてしまう。
 もっといびつで複雑で、時にみっともないほどにすがり付いてしまうもの。
 それが愛であり、女であり、人間という生き物である、といわんばかりに。

 「nΦw」「dive」といった曲のもつ軽快なイメージとは裏腹の現状に対する苛立ち、「百年後」の幸福ゆえの怯えと誰にも約束できない永遠、"戻らないもの"へ問いかけながら戻らないことを静かに受け止める「きみが残していったもの」で聴かせる放心。
 加えて、映画ありきの曲であり、しかも他作でありながら柴咲コウという女性を外側から俯瞰かつ洞察した福山雅治作「最愛」の普遍さ、東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊がゲスト参加、ハード・ボイルドな新境地を拓いた「よくある話〜喪服の女編〜」でのしたたかでウブな駆け引きと、内から湧き出るもの、外からの刺激によって露わになる別の顔、その対比も面白い。

 ロック・モードで押す冒頭から、真骨頂である中〜低音の魅力が味わえるバラードを挟みつつ、エレクトロニカな味付けがなされたポップ・チューンを散りばめた構成。
 その多彩なプロダクションに呼応するように歌は豊かな表情を見せるが、それはいかにもシンガー然としたそれではなく、表現者といった大仰さを感じさせることもない。
 しいて言うなら"逃げない歌"、といったところか。
 それはデジタル・ビートの中でも、ハードなロック・グルーヴの中でも決して埋もれることはない。
 アルバムも4作目を数えてなお、自分の歌に忠実な人である。

 初回盤は全17曲、トータル74分に迫る大作だ。
 うち5曲の既発曲が収録されているのだが、恐らくベスト・アルバムのようなオリジナル作にはしたくないとの考えからだろう。こんなところにもパラノイアの片鱗が窺えるようだ。

Text by 篠原美江


柴咲コウ-J初回『Love Paranoia』 [初回盤]DVD付 発売中
ベスト・アルバムも大ヒットを記録した柴咲コウ、2年7ヶ月ぶり待望の4thアルバム。初回限定盤は特殊パッケージ仕様、ボーナス・トラック「泣いていい」収録。さらにシングル5曲のMusic Video、撮り下ろしのメイキング映像ほかを収録したDVDと40Pに及ぶ別冊ブックレットが付く。

柴咲コウ-J通常盤『Love Paranoia』 [通常盤] UPCH-20174
※写真は上が[初回盤]、下が[通常盤]のジャケットです。

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【2009/12/01 21:00】 | ISSUE#122 09.11-12 | page top↑
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